十二歳 作:椰月美智子 感想

小学校6年生になった4月から中学に羽ばたく3月までの一年、心もからだも子供以上大人未満の微妙な年頃、いままで意識したことのない友達との差を感じ、頭とからだのバランスが崩れてしまうこともままある。主人公の「さえ」は、ポートボール(今の子供は知らない子が多いらしい)が大好きで友達もたくさんいて、なにごとも無難にこなすことのできる子だった。しかし、夏が過ぎ秋になろうとしていた頃、ポートボールの練習試合、ここ一番の勝負所で、フリースローをはずして、その試合に負けてしまう・・・それがトラウマとなり、いつも言い訳を作り、現実から逃げるようになる。心配そうに様子をうかがう友達、悪いと思いながらもその場を取り繕い逃げようとする自分・・・なんとなく「さえ」と娘がだぶる・・・。十二歳という歳はなんでもできる可能性があって、これからの自分に一番わくわくする年齢だろう。未知の中学生活に不安と期待を抱き、慣れ親しんだ友との別れと新たな出会いもあり、まさに高校のそれよりも『幼虫が羽化する』ときに近い変態が起きる時期と思う。あぁ、懐かしい、地元の景色が浮かぶようだ。
この本の中の一文、『運命は決まっているけど、自分の気持ち次第でどうにでも変えられる。』さえが気の持ち方を語っているものだが、なかなかどうして前向きな考え方で、だいぶ歳の離れた今の私も見習わなければならないと強く感じた。
たまには、少年時代を想い出させてくれるような本もいいですね。