2009-01-01から1年間の記事一覧

掏摸(すり) 作:中村文則 感想

都会の雑踏、その中で生き抜くひとりの掏摸。裏の世界にいながら、非情になりきれず温かい面をみせてしまう。それがいいところでもあり、浸けこまれるウイークポイントにもなってしまう。 ある犯罪に加担したことをきっかけに裏社会の番人ともいうべき冷酷非…

父の背中

先週から給湯器が故障している。そのため、1階の親世帯の風呂を夜な夜な借りている。一昨日の深夜1:30頃、風呂に入ろうと階段を降りていくと、トイレに用足しで起きた父が寝ぼけ眼で廊下を歩いてきた。1階の風呂の隣はトイレ、その正面は階段になっている…

16 シックスティーン 作:石田衣良 感想

月島のあの4人が高校生になって戻ってきた!あれから2年・・・それぞれがそれぞれの個性のもと歳を重ねているけど、変わらない4人。読み進めるうちに『14』のシーンもよみがえってくる。なんだか懐かしい感もあり、また一方で4人の成長にほほえましい…

十二歳 作:椰月美智子 感想

小学校6年生になった4月から中学に羽ばたく3月までの一年、心もからだも子供以上大人未満の微妙な年頃、いままで意識したことのない友達との差を感じ、頭とからだのバランスが崩れてしまうこともままある。主人公の「さえ」は、ポートボール(今の子供は…

悪人 作:吉田修一 感想

一人の普通の若い男が、ふとしたことから殺人を犯してしまう。罪は憎く重いが、それを犯した背景には偶然の積み重ねと、生い立ちからくるトラウマが重くのしかかる。本当に極悪非道な殺人犯なのか・・・読み進めていくうちに、偶然犯した罪に追われる被害者…

吉祥寺 サトーの『メンチ』に感激

吉祥寺周辺に行く用事があり、かねてからチャンスがあれば食べてみたいと思っていたサトーのメンチを買うことができました。このメンチは、ボール型で元祖「丸メンチ」と云われています。ずっしり重量感があり、松坂牛が入っている?というメンチ・・・肉汁…

そして誰もいなくなった 作:アガサ・クリスティー 感想

久しぶりにアガサ・クリスティーを読みました、自身5年ぶりです。 孤立するインディアン島、姿なき殺人鬼U.N.オーエン、インディアンが次々と消える童謡をなぞるように、一人また一人と殺されていく・・・インディアン島にいるのは、U.N.オーエンに招待され…

横道世之助 作:吉田修一 感想

土曜『王様のブランチ』の松田(哲夫)チョイス(マッチョイ)のコーナーが無くなってはや2カ月、ブックナビのコーナーはあるものの、地に足がついていないというかナビゲーターが毎回変わるので、一貫性が無くなっているというか、結果あまりブックナビを…

造花の蜜 作:連城三紀彦 感想

誘拐事件を題材にした小説はたくさんあります。先日ご紹介した『死亡推定時刻』も富士吉田市を舞台とした女子高生の身代金目的の誘拐が書かれていたのは、私も記憶に新しいです。でも、この「造花の蜜」における誘拐は、ひとことで言うと、『蘭』というクー…

学問 作:山田詠美 感想

学問というタイトルとあの山田詠美というなんとも言えないギャップがあって、どんな内容なのか興味津々でしたが、読み進めているうちに納得しました。これはまさしく山田詠美の作品です。そして、過去に映画にもなった『ぼくは勉強ができない』より映像化す…

IN 作:桐野夏生 感想

INは、『淫』であり、また『隠・因・隠・姻』となり、そして『IN』に戻る。それぞれのINは、その漢字の示す意味のストーリーで組み立てられていて、さらに相互に繋がっている。 この本は、小説家「鈴木タマキ」と担当編集者「阿部青司」の出会いからお…

元気でいてよ、R2−D2 作:北村薫 感想

北村薫の短編集ということで読んだんですが・・・う〜ん・・・正直なところよくわかりませんでした。最近心理描写のストレートないわゆるライトなものばかり読んでいたせいか、北村ワールドの奥深さを理解できなかったです。「腹中の恐怖」はぞっとする感じ…

流れ星が消えないうちに 作:橋本紡 感想

最愛の人「加地君」を無くし、一人で住む家の玄関で寝起きする奈緒子。加地君とも親友だったが彼の亡き後、奈緒子と付き合っている巧。2人は付き合ってはいるものの、それぞれに恋人そして親友だった加地との想いを引きずり悩んでいる。突然異国の地で事故…

罪深き海辺 作:大沢在昌 感想

東京からさほど離れていないが、しずかな港町『山岬』を舞台に起こる利権がらみの事件。それはかつて殿様と呼ばれた山岬の2大地主の一人今は亡き『千場伝衛門』の甥『功一』の出現がきっかけで発生した。さかのぼること6年前の台風の夜の伝衛門の死、さら…

贖罪 作:湊かなえ 感想

日本一空気のきれいな町の小学校で起こった殺害事件。被害者は、校庭遊んでいた5人の少女のうちの一人、都会から引っ越してきた娘だった。なぜその子だったのだろうか?難を逃れた4人の少女たち一人ひとりが心の傷を負う。 前作の告白同様、ひとつの事件を…

押入れのちよ 作:萩原浩 感想

『ちよ』は、築35年、家賃3万3千円のマンション(?)に棲むビーフジャーキーとカルピス好きの女の子。生まれは明治39年、でもいまだに14歳。深夜寝静まった頃に現れ、テレビを見たり、残り物を食べたり、歌を歌ったりするおかっぱ頭の女の子。 萩原浩といえ…

死亡推定時刻 作:朔立木 感想 

この本、読み始めたら舞台となっている街の情景・背景といったものが懐かしく、「そうだったなっ」とか「あっ、あそこだ」と手に取るようにわかって、すごく身近に感じられました。 そんなことはさておき、話しの内容は、司法の機関に『?』を感じるもどかし…

愛しの座敷わらし 作:萩原浩 感想

読み終えて本を閉じたとき、なんだか心がポッと暖かくなりました。いまどきの家族を象徴するかのような高橋家。父の晃一は食品メーカーのうだつのあがらない万年課長、母の史子は夫に愛想を尽かし姑にも悩むありがちな主婦、長女の梓美はいわゆるKYで友達…

まぐろ焼き 築地 さのきや

この間、知人の紹介で行ってきました。なんたって、『まぐろ焼き』屋のさのきやです。たい焼きならぬマグロ焼きで、お腹に「つきじ」って入ってます。お品書きは、中トロ180円と本マグロ150円の2本立て。甘すぎずしつこくない餡子には、「杏」も入れてある『…

星守る犬 作:村上たかし 感想

この本というかこのコミックス、今日の『松チョイ』で紹介してたので、素直に本屋で見つけて読んでみました。タイトルの「星守る」とは、星をじっと見続けているという意味とのこと。犬はその存在で癒されると聞くが、星をじっと見続ける犬は「何を想い」「…

風の歌を聴け 作:村上春樹 感想

いま売れに売れている1Q84を買おうと思い書店に行きましたが、村上春樹=ノルウェイの森といった程度にしか分っていないといったつたない知識の自分なので、最新刊はさておき、まずはデビュー作にあたるこの『風の歌を聴け』で作者を感じたいと思い読ん…

ひかりをすくう 作:橋本紡 感想

ひたむきで手の抜けない性格と、周囲の期待・・・仕事漬けの都会生活が原因で、精神の器がキャパを超えパニック症候群となってしまう智子。そんな智子を支えて、スローで気の向くままの生活を実践していく主夫を演じる哲ちゃん。2人の生活を見ていると、お…

4TEEN(フォーティーン) 作:石田衣良 感想

月島・築地・銀座そして新宿・・・昔の風情を残す情景が浮かぶ町と、光と影をもつ大都会の街並み・・・その中で、子供以上大人未満14歳の少年4人が『仲間・友達』といったことをテーマに語る物語は非常にこきみよかった。さらに、小道具としてたびたび出…

夜の公園 作:川上弘美 感想

自分の中では、煮え切らない恋の描写ならお勧めは「川上弘美」なのですが、その領域がさらにパワーアップして、のんびりした雰囲気の中の愛憎、いわば、『夏の高原の真ん中のコタツみかんと膝枕』(よけいわからないか?!)、ストレートに言えば『まったり…

風に舞いあがるビニールシート 作:森絵都 感想 

この本の帯には「大切な何かのために懸命に生きる人たちの6つの物語」と書いてありました。物語ひとつひとつにはそれぞれの大切なものが書かれていて、その大切なものとは、一般的な「金」・「命」・「家族」とも違ったもっと深いものが現されています。中…

約束 作:石田衣良 感想

この作品のあとがきで作者の石田衣良は、以下のように書いています。 テレビニュースを見て泣くことはめったにありませんが、池田小学校事件だけは例外で、悲しくて、腹が立ってたまらず、気づいたら鼻をすすっていました。生き残った子供たちにエールを送り…

かあちゃん 作:重松清 感想

重松清の最新作ということで、早速読んでみました。 以前ご紹介した『とんび』と反対の『かあちゃん』・・・そこには多感な時期、半人前以上となった中学生の心と身体の成長が書かれていました。重松作品では、父親がメインとなることが多かったと記憶してい…

ROOKIES(ルーキーズ) 卒業 感想

去年ON AIRの土曜ドラマから、はまりっぱなしの『ROOKIES』、昨日公開となった映画『卒業』をついさっきまで観て、戻ってきました。18:40から21:10までという日曜の遅い回にも関わらず、家族連れを中心にほぼ満席状態のシネコンで、席も前から3列目というい…

ブラバン 作:津原泰水 感想

『スイングガールズ』って女子高校生ビックバンドの映画がありました。それを思い描いて手に取りました。・・・高校を卒業して四半世紀、アラフォー世代の元典則高校吹奏楽部メンバーが、遅咲きの同級生の結婚披露宴での演奏を目標に再結成する。四半世紀を…

豚インフルエンザ!?

今年のゴールデンウィーク、マスコミで頻繁に流れていたのは、『大渋滞』と『インフルエンザ水際対策』。そんな中、体の節々が痛く身体がだるい・・・まっ、まさか・・・ここ2年海外へ行ってないけど新型インフルエンザ??・・・熱は38度、ポッカポカ陽…