夜行観覧車 作:湊かなえ 感想

どうしても『告白』の衝撃が頭に残っていて、湊作品に手が伸びてしまう。あのそら恐ろしいまでの人間の深層心理に迫った行動・人の心の表と裏にまた触れたくて・・・

この本、舞台は丘の上の高級住宅街「ひばりヶ丘」、そこに住むご近所3家族の物語である。ひばりヶ丘に憧れて、小さいながらもそこにマイホームをもったが、いつも年頃の娘の癇癪で困っているサラリーマンの遠藤家。向かいの城のような邸宅に住んでいて絵に描いたようなエリート一家で、医師の高橋家。遠藤家の隣で、これまた重厚な邸宅に住むが、うわさ好きの小島家の奥様。遠藤家で起きた家庭内殺人から話しがはじまる。なぜ、恵まれた高橋家で、妻が夫を殴打し、殺さなければならなかったのか?なぜ、遠藤家の娘は癇癪を起こしてしまうのか?日時で区切られ、家族単位で見方を変えて語られる章立てのひとつひとつが、ひとつの話しとして糊しろをもってつながって行く・・・みごとです。本当に怖いものって人に語れるものではありませんね。つくづく人って深く深く掘り下げないと、わかったつもりでもぜんぜんわかっていないといったことになったりする。人の心って、親・兄弟でもわからないし、ましてやそこに女性の思いが入ると、払拭しても拭いきれない思いもあるといったちょっと身につまされる怖さを感じました。

それにしても、湊作品は小気味いいですね。自分の身近に感じるような話題だからかもしれませんが・・・