悪の教典 作:貴志祐介 感想

 読みはじめは、『告白』のような展開になるのかなと思ってたんですが、蓮実は予想をはるかに超えた狡猾さで、二手三手先に手を討ってくるんです。その策略の根底になるものは、まさに情報であり、マーケティングです。なんだかドラッガーの理論を忠実に再現して、PDCA(計画・実施・評価・改善)しているようで、読み進めながら内容を超越して事案に移し替えて「なるほど」と感じるところもありました。とはいえ、生徒のため・学校のために作った監視カメラや防災扉など先進の集中管理インフラが、先進という言葉を逆手にとってもろ刃の剣だということも知らしめてもいるようです。最近起きた『米大統領専用機のフライトプラン(飛行計画)などの航空管制情報漏えい』も、情報を知りえる者の内部漏えいであり、疑うは内部の人間のさいたるものですね。こんなことが頻繁に起きているとは思いたくないですが、教師というある種の聖職に就いている人でも、頭が切れるだけに誘惑も多いのでしょうね。子をもつ親としては、何を信じればいいのか分からなくなるくらいの衝撃ですが、反面教師で【信じるだけではいけない】とも教えられますね。

ともかく、この本面白いです・・・が・・・グロくて、怖いです。