春のオルガン 作:湯本香樹実 感想

小5の娘に読ませるべく手に取った作品ですが、昔の青臭かった時期に大人を見て想った漠然として言葉にならないような不安や矛盾など、あのときの気持ちを呼び起こしてくれるような小説でした。作者は、「夏の庭」もそうでしたが、少年・少女の目線や間が悔しいくらい美しく書かれています。主人公の姉・下の子を絵に書いたような弟、家に寄り付かない夫を表面ではあきらめでも心底信じている母、隣の家の頑固オヤジ夫婦、ノラネコに餌をやる大きなおばさん、そして、物を大事にする祖父・・・物語は、隣の家との境界線の揉め事からはじまり、それを見ている弟の隣のオヤジに対する報復とまではいきませんがイタズラ、姉として、少女から大人に変わる時期の心理描写、そして最後に、思い出の詰まった家の納戸に置かれ、きちんとたたまれたオルガン・・・など、もう一度、あの頃に戻りたいといった郷愁にさそわれた作品でした。
今日は、子供と一緒に本の話題で、盛り上がれそうです。次は、「ポプラの秋」かな・・・