西の魔女が死んだ 作:梨木香歩 感想

澄みきった空気、豊かな自然、その中でしっかりと息づく生命の息吹き・・・物語は、西の魔女(祖母)が亡くなった知らせを学校で受けたシーンからはじまる。都会に住む主人公の『まい』は、仲間外れが原因で学校へ行くのを拒否。そこで、しばらく田舎の大好きなおばあちゃんの家で過ごすことにした。おばあちゃんは亡き祖父の国である日本をそして自然を愛す英国人、正真正銘のまっすぐなカントリーガールだ、よって生活は毎日が自然と親しみ、自然の恵みとともに生きるといった今の言葉ならスローライフにあたる。まるで、「アルプスの少女ハイジ」を思わせるような毎日。都会の不規則な生活から、早寝早起き、規則正しい生活を辛抱強くおくることが『魔女修行』と教わり、粘り強くそれを実行していく。そんな中、苦手な人が絡む事件が起こる。なんでも無いことだが、おばあちゃんに『ごめんなさい』の一言が言えない。さらに、言えないままあわただしく都会生活に戻って行く・・・・見送る大好きなおばあちゃん、でも一言が出ない・・・そして、2年後、まいが言えない言葉を心に残したまま、おばあちゃんは亡くなった。駆け付けた変わらないおばあちゃん家は、西の魔女がかけた魔法でもあったようにまいの心に語りかける。『I Know』と・・・
『I Know』の言葉は心に響いて、じわっとひろがり温かく包んでくれます。都会の喧噪の中、毎日が戦いの連続ですが、たまには空を見上げ、その大きさ・深さを想像して、ホッと一息入れてみるのもいいかもしれません。週末、素足で芝の上を歩いてみようかなと思わせる一冊です。