みぞれ 作:重松清 感想

たまに心の暖をとるかのように重松清を読む・・・いつも裏切らない物語がそこにあり冷え切った身体にマッチ売りの少女の燈すやわらかくて心地いい灯りのような気持ちをそっと置いてくれる・・・この『みぞれ』は1篇が40ページ程の短篇が11載せられている作品集だが、なかでも後半の3篇の「望郷波止場」には幼馴染の暖かさを、続く「ひとしづく」には日常の生活の自分と他人のリズムと考え方の差異を、そして最後にタイトルとなっている「みぞれ」には離れて暮らす親子の想いが織り込まれている。生活や暮らしをテーマにして今を生きる読者にこれだけ響くものを創り続ける重松清の懐の深さには感動するものがある。はじめて重松作品にふれたのは『きよしこ』だったが、そのとき受けた感銘が、何を読んでも変わらずそこにあり、まるでいつでも帰ってこいと言っている"親"のようだ。『みぞれ』・・・人が好きになる作品です。