とんび 作:重松清 感想

読みながらこんなに人前で読むのが恥ずかしくなった本はありません。月曜の朝、東京から京都に向かう新幹線の中で読み始めましたが、涙がとまらず鼻水出っ放し、ハンカチで目を押さえ、ティッシュで鼻をかみ、車中の人に奇異の目で見られているような感じがして・・・浜名湖を過ぎたあたりで、目が腫れるのを気にして本を閉じました。そして、週末まで読みたい気持ちを封印。なんでこんなに心に沁みるのでしょうか・・・主人公のヤスと同じで子を持つ親だからでしょうね・・・
物語は、ヤスの息子アキラの年少期から親になるまでがひとつひとつ成長の区切りとともに描かれています。昭和の日本の父親の代名詞のような頑固でいてそれで恥ずかしがりのヤス、母親を早くに失い父子家庭でも近所の人の愛にはぐくまれまっすぐに育つアキラ・・・両親を知らないヤスに家族をそして親としてすべきことを諭す和尚、『子供にさびしい思いをさせるな、海になれ。子供の悲しみを呑み込み、子供の寂しさを呑み込む海になれ。』吹雪で極寒の海を前に語るシーンは、涙がとまりません。
やられました、"とんび"に完敗です。そして、こんな物語が書ける私より1歳上の重松清に脱帽です。
とんび・・・今年最高の物語です。