ばかもの 作:絲山秋子 感想

タイトルに惹かれ、帯にあった『本格恋愛小説』という言葉に昔の甘酸っぱさを期待し、読んでみました。主人公は、気ままに過ごす大学生のヒデ、世の中を知りつくした風で年上の額子。この2人の自由奔放な生活ぶりからはじまります。しかし、それらも長くは続かず、お互い別々の道を歩むこととなります。ビデは、知らぬ間にはまっていくアルコール漬けの生活、離れていく仲間、中毒・闘病を通じての葛藤。額子は、結婚、不慮の事故での左腕切断、離婚、街の喧騒と離れた場所での生活。お互いに大きな何かを失い、絶望の淵をさまよった後、ふたたび2人の道が重なる。時代が生んだまさに今を生きる若者達が、無気力でさまよい続けるたどり着く先がわからなくて暗く実態のない道。その道の果てなのか、まだ続くのか、今はそれすらわからないが、苦い経験をした後に掴んだ一筋の光、それを見失わず歩むことをやっと悟った後での再会。2人の関係は、恋愛を超え空気に変わる・・・
期待した青春時代のわくわくするような甘い物語ではなく、飽食時代の若者の無気力さや考え方を背景としたちょっと重たい恋愛小説でした。考えに煮詰まったとき、気分転換にどうぞ・・・もっと重くなるかも・・・