希望ヶ丘の人びと 作:重松清

読み終えたあと、冬寒とした天気なのになんだか心がポッカポカで、夜なのに見上げるまっくらな空と冷たい空気が気持ちよく、同じ駅で降車する知らない人に声を掛け一緒に飲みたくなるそんな物語でした。先ほど帰宅の車中で読み終えたのですが、涙がとまらず、気味わるく思った人もいるでしょう。でも、ハートに響く本を読んで、素直にハートが震えたんです。主人公の田島パパと同年代のわたしには、書かれているその行動のひとつひとつが子を想う親の気持ちにあふれていて、心に熱く響いたんです。いまどき無い世界と笑われるかもしれませんが、わたしの心の隅っこに追いやられていた熱い血潮が、物語の描く世界とシンクロして、とても気持ちよかったんです。
中学生の娘(美嘉)と小学生の息子(亮太)を持ち、妻に先立たれた田島パパは、亡き妻のふるさと「希望ヶ丘」に引越してきた。希望ヶ丘は、1970年代に造られた当時のニュータウン、だからなにもかも四角四面で普通以外を許さない。学校で孤立していく美嘉・母の影を追い続ける亮太・・・亡き妻の同級生のフーセンさん、エーチャン、宮嶋 そして、エーチャンの娘マリア、ショボ、瑞雲先生。人との熱い関り・・・極めつけは、想い出の合唱曲『銀色の道』・・・天国で見守るの妻のいたずらだったのかもしれない。引越してきた当初無味乾燥だった希望ヶ丘の夕焼けが暖かく変わっていく、「ふるさと」の意味がわかってくる、そんな心温まる物語です。40代の親父諸君、昔を想い出させる作品ですぞ!!!