カタコンベ 作:神山裕右 感想

シンと静まる光のない地底の世界、神秘的であるものの人の五感を閉ざすその世界は『恐怖』そのもの。ケイビング、地底へのダイブは先が見えない世界だからこそ何が起こるか予測がつかない。そこを舞台として起こる事件、拳銃を使った殺人、押し寄せる自然の驚異、解き明かされる五年前の事故の真相・・・どんどんケイブダイバーたちに引き寄せられました。洞窟というとすぐに思い浮かぶのは、日原や秋芳洞など観光地ですが、それでもそこは夏でも肌寒さを感じ、さらに見る者を魅了するような神秘さがあります。大人も子供も圧倒されるそんな景観が、地下という思いっきり非日常の世界にひっそりとそして隠くれているように広がっている・・・まさに怖いもの見たさの象徴のような存在ではないでしょうか。主人公の東馬亮は、自分のために危険を顧みず恩人の娘の救助に向かう。残された時間は僅か、光を求めてギリギリの体力で突き進む。カタコンベの世界にどんどん引き込まれ、時間を忘れて読んでしまいました。すんごく面白いです。私は今回で2回目ですが、また違った観点で楽しめました。いいと感じる作品って何度読んでもいいですね。