かあちゃん 作:重松清 感想

重松清の最新作ということで、早速読んでみました。
以前ご紹介した『とんび』と反対の『かあちゃん』・・・そこには多感な時期、半人前以上となった中学生の心と身体の成長が書かれていました。重松作品では、父親がメインとなることが多かったと記憶していますが、今回は初の母親メインの物語で、子から見る母、母の気持ちが繊細に書かれています。通勤電車の中で読みましたが「親」として涙が止まらぬシーンが多々ありとても恥ずかしかったです。
物語は不慮の交通事故で父親を亡くし、母子家庭となった子供の母への想いからはじまります。父親の運転していた社用車にカーブでセンターラインを超えて迫る対向のトラック、それを回避しようとハンドルを切ったもののガードレールを越え電柱と衝突。不運にも運転していた父と同乗していた父の上司が亡くなった・・・悪いのはセンターラインを超えて迫ったトラック、でもその車は走り去って行方知れず・・・上司の家族は、父を恨みその家族を恨む、その恨みの矛先を子供にまで向けられないよう願い、重荷を背負い一生悔恨の日々をおくることを心に刻む母、被害者の家族に申し訳ないと"笑う・楽しむ"ことを捨てた・・・
「謝ること」と「償うこと」、相手があることと自分でできること、これが物語の中心に流れています。母と子の絆を立場を変えて綴る重松節、またやられました。