押入れのちよ 作:萩原浩 感想

『ちよ』は、築35年、家賃3万3千円のマンション(?)に棲むビーフジャーキーとカルピス好きの女の子。生まれは明治39年、でもいまだに14歳。深夜寝静まった頃に現れ、テレビを見たり、残り物を食べたり、歌を歌ったりするおかっぱ頭の女の子。
萩原浩といえば、渡辺謙が主演した若年性アルツハイマーがテーマの「明日の記憶」が思い浮かびますが、一転してこの本は8編からなる幽霊ものです。しかし、どの作品も怖い幽霊の話しというより、社会問題や風刺がテーマだったり、人の情がテーマだったりで、オモシロ怖く読ませてもらいました。
本(短編集)の題名にもなっている「押入れのちよ」は、幽霊の話しなのになんだか愛くるしくて、そして可哀そうで、同情してしまうような内容です。『ちよ』の時代、貧しい日本にあった『穀潰し』、そして『からゆきさん』がテーマ。マラリアになって死んでしまったのもわからず、現世をさまっているのです。背景は悲しいのに、愛くるしく振る舞う『ちよ』。その素直な気持は、現代の若者にも【なんとかしなきゃ】と思わせるものがあります。「テダ・アパアパ」この言葉って、「気にするな・なんとかなるよっ」てことですかね?