罪深き海辺 作:大沢在昌 感想

東京からさほど離れていないが、しずかな港町『山岬』を舞台に起こる利権がらみの事件。それはかつて殿様と呼ばれた山岬の2大地主の一人今は亡き『千場伝衛門』の甥『功一』の出現がきっかけで発生した。さかのぼること6年前の台風の夜の伝衛門の死、さらにその3年前の先代伝衛門の妾の死、それら過去の事件も蒸し返しとなるような流れの中で次々と起こる事故に見せかけた殺人事件。だいそれた事件など起きないだろうとたかをくくっているような親方日の人間の多い岬署の中で、定年間際の老刑事『安河内』の単独捜査が異彩を放つ。
大沢作品は大好きで好んで読んできていますが、今回の安河内は、新宿鮫の鮫島でもなく、いぶし銀の味があり、どこか暖かさのあり憎めない新たなキャラクターです。また、岬署の署長にはキャリアの30代女性署長を配し安河内をバックアップさせるところなど、新宿署コンビ(鮫島と課長:まんじゅう)の新たな組み合わせでの復活とも見れました。鮫島ファンとしても千場との絡み含め大いに楽しめます。
事件は伝衛門の遺言で山岬市が受け取った土地と金を元に建てたマリーナの相続回復請求を基軸に金がらみの様相を呈す。しかし、その結末は・・・アッッッッ・・・非常に面白く一気に読めました、お勧めです。