掏摸(すり) 作:中村文則 感想

都会の雑踏、その中で生き抜くひとりの掏摸。裏の世界にいながら、非情になりきれず温かい面をみせてしまう。それがいいところでもあり、浸けこまれるウイークポイントにもなってしまう。
ある犯罪に加担したことをきっかけに裏社会の番人ともいうべき冷酷非道な人間につけまわされてしまう。どこにいようとまるで監視されているかのようにつけまわされ、挙句の果てに『失敗は死』を宣告されてヤバイ仕事を任せられる。なんとかその仕事をこなしたものの、その先に待っていたものは・・・
ストイックな生き方、そんなものは長続きできない。親友、家族、仲間・・・人は支えあって今を生きるもの。ひとりじゃない、人は人に助けをもとめるんだ。楽なときも苦しいときもそれをわかちあって今を生き抜くことが大切なんだ。そんなことを強く感じさせられる作品でした。