閉鎖病棟 作:帚木蓬生 感想

個々の話しが、患者の入院前の物語で、それぞれの閉鎖病棟の生活につながる。閉鎖病棟は、治療の場ではあるけれど患者から見ると唯一の戻れる場所。でも、巣立ちの時は必ずやってくる。完治しての退院・事件を起こしての強制収監・亡くなっての退院、かたちはいろいろあるものの、喜怒哀楽、思いや背景がそれぞれに存在する。物語は、ひとりの少女が精神の病になってしまう過程から、その少女を通しての入院患者との心のふれあい、そして凶悪な事件、その復讐、そして少女の願いと希望へと続く。中盤ダラダラした感があったが、一転して終盤のグイグイ読ませるその感じは、この物語を知ってすごく良かったなと思わせくれる。普段、我々が目をそむけがちになる閉鎖病棟だが、そこにはピュアな心や想いがあり、ピュアだからこその物語がある。本当に心温まるストーリーです。