思い出トランプ 作:向田邦子 感想

村上春樹を読みながら、部屋の本棚を眺めてみると、村上さんの作品に比べて、見た目がすごく薄い本が目に留りました。手に取るとそれはタイトルバックの絵とともに『向田邦子』の文字・・・懐かしい想いがして、村上さんを中断して約3時間・・・向田ワールドの短いんだけど深い世界に浸らせてもらいました。村上さんとの大きな違いは、情景描写かな。向田作品の中でも、この「思い出トランプ」に入っている直木賞作品の「花の名前」と「かわうそ」は、あまりにもリアルに妻と夫の機微を書いているので、夫の立場で読んでいるとゾッとする瞬間がいくつもあり、短編なのに底なしの恐怖も味わえます。えっ!なにが恐怖かって、そんなの人が一番怖いにきまっているじゃないですか・・・それも、一番近くにいて何もかもわかっていると思っている人が、一番怖いんじゃないですか?だって、相手は、すべてわかった上で、動いてますよ。手のひらの上で・・・ピシャっとやられるか、真綿で首を締めるように、ゆっくりとそして確実に仕留められてしまうんです。そんな夫どもってどう思います・・・答えは、向田さんが書いてくれればよかったのになって思うと、とても残念ですね、そうでしょ!!!