ニシノユキヒコの恋と冒険 作:川上弘美 感想

なぜか川上ワールドのあの不思議な女性感覚の世界が懐かしくなって読んでみました。

一言、ニシノユキヒコ(西野幸彦)は幸せだったんでしょうか?この本、はじめから終わりまで、西野幸彦の色恋が10篇入った短篇集だけど、男性として羨ましいと思う反面で、勝ったと思えるのはなぜだろう。川上さんは、西野の相手である10人の女性の心理描写について、いつものようにフワフワっと書いていて、おそらく女性読者は心を掴まれるなにか(男性には感じられないものかも)がそこにあるが、男性から観るとなんだか「そのノウハウ伝授して欲しい」と思うものの、「ニシノのような人生は悲しすぎる、こうなりたくない」とも強く思うんです。10篇目の『水銀体温計』の中で、新旧の彼女が会う場面があり、『女の子どうしの、ひそやかな、けれど国家の外交にも似た、このような精神的な力の均衡関係を男の子はどう感じているのだろうか』なんてところはほんと、脱帽!といった女性描写ですよね。小説の内容もさることながら、私は、こういった表現にいつも感心しています。まあ、西野さんの生き様は、本人にとって幸せなら私がどうこう言うものじゃありませんけど・・・ね。(こんな感想ですみませんが、読んでみるとわかりますよ。語るまでもなく、ごちそうさまです。)

なんだか、川上弘美の文章に嫉妬する自分がいました。