下流の宴 作:林真理子 感想

他人事とは思えない福原家の在り様が、身につまされる。自分に置き換えたら、高校中退しようとする息子に何といってやれるのだろうか、また、二十歳を過ぎても定職につかず漫喫で働く息子が、突然、年上の女の子を連れてきて、「同棲している、結婚したい」と言ってきたらこれにどう対応するのか。一方で、順風満帆で進んできたように見えた娘も、結婚相手の心の病からつまづきはじめる。あこがれの白金ネーゼ、玉の輿にのったかに見えたが、1年そこそこで生活にひびが入り、愛息とともに実家に戻る。
福原家は、なんだか将来の自分とダブッて見える。もし、そんな事態に陥ったら、いまの自分はなんなのか、間違っていないか、いまできることはなんなのか、そんな問いが溢れる。家長として読むと、そんな気持ちになるし、あるいは見方を変えて、福原家を支える妻として見ると、『何が間違っているの!』と叫びたくもなる。親の反省と子供への期待を込めた教育が、裏目となっていく、相談相手にもならない夫は、お前の責任と言わんばかり。四面楚歌だが、事態はなるようにしかならない・・・。
そんななか、息子の彼女が、国立大の医学部にチャレンジする。プー太郎の生活からの脱却、高校卒業後のブランクのハンデを抱えての無謀とも言える挑戦。そのきっかけとなったものは・・・そして、結果は・・・
久しぶりに林真理子作品を読んだけど、おもしろくて、かつぞっとしました。続きを知りたくなるくらいのめり込んでいた自分が、おかしかったです。ひょっとしたら、続きは読者それぞれが描くものかもしれません。
恐〜。