最後の証人 作:柚木裕子 感想

「人は選ばなかった人生に常に嫉妬して生きていく生き物だ。」
あの時のことを深く後悔しても、あの日・あの時は決して帰ってこない。私自身、人は常に前を向いて、目線を高くして進むべきだし、そうありたいと常に思っている。でも、どうしても過去に引きずられる瞬間がある。それは、自分のことではなく、自分の周りにいる家族や仲間に対しての後悔だ。この本は、幸せで豊かな3人家族を不意に襲った交通事故で、最愛の息子を失うところからはじまる。なぜ、雨の夜道の塾帰り、迎えに行かなかったのだろうか・・・車で迎えにいっていれば、事故になることもなかったのに・・・失ったものが大きければ大きい程、後悔の念は強くなる。ましてや、後ろにいて唯一の目撃者となった息子の親友の話しでは、車が信号無視で突っ込んできて、事故を起こして、降りてきた運転手が酒臭かった、のだから・・・でも、罰せられるべき運転手は、不起訴・・・こんなのやりきれない・・・私自身も親、こんなことが起きたら『気がふれる』だろう、切なすぎる、どこに不満をぶつければいいのだろう・・・残された父母がとった命を賭しての復讐は・・・
「罪は代替できるものじゃない。その人間が犯した罪で裁かれなければ意味がない。」
言葉の重さがひしひしと感じられました。
この本、やさしいタッチの中に燃えるような想いが見え、今年いままでで最高にいかしてます!