永遠の0 (ゼロ) 作:百田尚樹 感想

今年もあの8月15日が来る。遠く暑い夏の日の玉音放送、『忠誠』『信念』『混沌』『失望』そして、当時熱い想いはあるものの口にしなかった『愛』・・・あの日から65年、あの時の孫世代にあたる私ですが、家族をもって、子を想う視点から改めて戦争を見つめなおすために手にした一冊です。
物語は、現代を生きる姉弟が、『母の本当の父を探す』所謂ルーツ探しで構成されています。祖父は、終戦の直前にゼロ戦特攻で亡くなった「宮部久蔵」、それだけの事実から、丁寧にひもとき、当時を知る元海軍関係者一人一人から聞いた話しを中心に幻想のような祖父の姿が、調べを進めていくことにより、しっかり確固たるものとして形になっていきます。今は年老いていますが、当時を知る語り手それぞれが、これまで口にできなかった辛く重い特攻隊員の現実、それが行間にも溢れんばかり書かれていて、涙で字が霞んでしまうことも多々ありました。
家族を持ってはじめて理解できる心・・・特攻の現実は、美談のように語られることが多いですが、なぜどうして、特攻になってしまったのか、官僚と現場、いまも残るその構図は、これからもそれでいいのかという問題を提起されているようにも感じました。私はそんな現実を埃のかぶった史実にしないよう伝えるべきだし、そこにある『愛』は、言葉にならないくらい純なものだと感じました。