美丘 作:石田衣良 感想

TVドラマで『美丘』がはじまって、原作が石田衣良ということで、読んで見ました。

思ったことをまっすぐに表現し、思った通りに行動する。できるようで、なかなかできないことを素で行動してみせる『美丘』、普通の大学生でありながら、火のついた導火線のように今を生きようとしている。そんな美丘と太一の物語、たった13カ月しか描けなかった2人の想い出は重く悲しいが、とてもピュアで美しい。でも、こんなことが小説の世界だけでなく起こっているとしたら、薬害について、もっと声大きく対峙していく必要がある。それは、人の命がかかっているのだから・・・そこには数多くの美丘がいるから・・・

薬害ヤコブ病(CJD)、発症したら進行は早く、あの牛のBSEのように脳がスポンジ化して、数か月〜数年で死ぬ。この病気、10年程度の潜伏期間を経て、いつ発症するかわからないとのことだったが、人を最終的に無動性無言にしてしまう。人格を失ってしまうことへの恐怖、それは、人が人で無くなることであり、はい出すことも出来ない大きな深い穴に、もがくこともできず吸い込まれるように思える。
TVドラマを見ていないので、原作の比較はできないが、この本を読み終えた後、人の親だからだろうか、その後の太一が気になって仕方が無い。心にポッかり空いた穴は埋めることが出来たのだろうか?真っ直ぐな太一の20年後を知りたいものである。石田さん、よろしくお願いします!