麦の海に沈む果実 作:恩田陸 感想

恩田作品って、ファンタジーのような中にも細かい生活や心理描写があり、はじめは不思議感満載でとっつきにくいと思いながら読み始めるのだけれど、いつの間にかその不思議ワールドがあたりまえのもののようになってきて、ついには物語の世界に引き込まれる・・・そんな本ばかりですね。今回の『麦の海に沈む果実』も読み出しから「これは、私が古い革のトランクを取り戻すまでの物語である。」ではじまって、なんのこっちゃ??と考えているうちに主人公の理瀬が、山の中の閉鎖された空間にある寄宿制の学校(まるでハリーポッターに出てくるホグワース)で次々と起こる事件に巻き込まれていく・・・男と女の二面性をもつ正体不明の校長、この学校では、校長が法そのものであり、絶対の権限を持つ・・・三月以外の転校生は、災いをもたらすと言われているのにも関わらず、二月末日に転校してきた理瀬、ただでさえ話題の少ない閉ざされた空間で、誹謗中傷の標的になりながらも自分自身をしっかりもって、仲間に支えられながもなんとか学校生活を送る理瀬、最後に待つものは・・・あとを引くような物語でした。