ラットマン 作:道尾秀介 感想

大沢在昌の『優れた小説を読みたいから、私は彼の作品を読んでいる。それは、私が小説家であることとは何の関係もない。』という解説にグッ〜!と引き込まれて一気読みしました。この作品、期待以上に読み手を楽しませてくれて、大沢在昌が『道尾作品で一番好きな小説』というのが分かる気がします。

物語の舞台は大宮。高校時代から10年以上続くバンドSoundownerが、創世記から利用している練習拠点の貸しスタジオで、そこの従業員であり、元メンバーでもある主人公姫川の恋人"ひかり"が死んだ。それは、事故なのか事件なのか、そのとき店の中にいたのは、練習中のSoundownerの連中だけ。いったいだれがやったというのだ・・・

人の想いというものは、相手を思いやる気持ちが強ければ強い程、妄想化することがある。真に自分が思うことを相手に相談することが怖くて、思い込んでしまう。それは優しさなのか、うぬぼれなのか。人間は、腹の底から全てをぶちまけて相談できる仲間が必要。それを探す旅が人生かもしれない。"黙して語らず"という美しさもあるにはあるが、語ることで仲間の絆が作られ強くなることも事実。なんでも言いあえる相手や仲間を作ることの素晴らしさと大切さを改めて思い知った気がしました。