あの頃の誰か 作:東野圭吾 感想

最近の東野作品は『まさかのいきなり文庫!』があり、読者としては、単行本より安価に最新作が読めると言う点で非常に助かっています。この流れは、東野作品だけでなくもっと多くなってくると価格的にみても『電子書籍』の対抗になると思うのは、私だけだろうか?まあ、持ち運びと言う点では、電子書籍に勝るものは無いが、趣と言う点をこの際だから強調したいです。感想からだいぶそれかかっているのでこの位にしますが、本の文化は、電子化の流れの中でも『こだわり』があって欲いと想うのは、私だけでしょうか?
さて、こんな世の中だから時代の寵児のような流通キャッチのこの本、作者は、【わけあり】の作品ばかりと書いていますが、確かにコテコテの定番と言えるような作品もありましたが、そんな中でもこの本の最後を締めている『二十年目の約束』は非常に感動的でした。
幼いころ、生まれ育った街で起きた猟奇的な殺人事件。その被害者は、小学生の女の子だった。女の子は、小雨降る中、裏山にいるところを通りがかりの男に殺されたのだ。事件は、いつもそうであるように被害者のみならず、その家族や友達の生活も変えてしまう。ネタばれになるので、全ては書きませんが、「二十年目の約束」は、文字通り長い時を経て果たされた約束の一部始終が書かれています。長い間果たされなかった約束・長い時間が経ったからこそ許される約束・苦しんだあとに果たされたことで解放される心持ち・・・なんだか心にズシンと来ました。このような作品が【わけあり】ならもっともっと"わけあり"を出して欲しいですね。東野さん、今後ともよろしくお願いします。