四十九日のレシピ 作:伊吹有喜 感想

 普通しっとりと執り行われる四十九日法要が、こんなにもたくさんの人たちの想いに暖かく囲まれて大宴会のようになるなんて、その人が生前にやってきた「人と接するときの献身的な優しさ」や「覚悟」が伺えて、すごく幸せな人生であり、そして充実した濃密な時間を過ごせたんだろうなと思いました。

乙母はお金で買えないものを持っていました。それは「あふれんばかりの愛」だったんだと思います。世の中には人と深く関わることを嫌う人もいます。でも乙母は、自身の身に付けた料理や家事の"いろは"を伝えることで、関わる人の笑顔を引き出していたんです。それは根気のいる刷り込みの繰り返しだったと想像しますが、それにより滲んできた愛は、暗闇で迷えるリボンハウスのメンバーにとって一縷の光やよりどころになったんでしょう。それが、想い出の歴史となり、家族では埋めきれなかった乙母の「あしあと帳」(年表)に皆が記してくれたことに繋がったんです。

四十九日のレシピは、乙母が残した『楽しく家事をするためのレシピカード』で、そこに描かれた微笑ましい絵や文字は家事や料理のやり方を伝えるだけでなく、生活に元気とうるおいを与えてくれるものでした。

どこか夏版の『いま、会いにゆきます』を感じさせるところがあります。映像化されたら是非観たいです!!切に期待します。