困っている人 作:大野更紗 感想

 病気と対峙するって、どんなに具合が悪くても、強い意志で自分が努力しないといい方向に向かないんだな。努力したぶんだけ好転するのは、病気以外のことと同じ・・。また、どんなに信じていたいと思う医師でも、所詮は『他人』であり『自身』ではない。だから、裏切られたと思う瞬間もあるし、それがしかたないことと思えるまでには一皮二皮も精神的に成長しなければならない。

この本は、辛いと思えるくらいの難病と戦った様子をユーモアたっぷりに『読み手』の立場で分かりやすい(読みやすい)ように描かれていました。作者の大野更紗さんが今もなお引きずる難病の発症から病名が判明するまでの奮闘や心の葛藤、さらに、入院しての闘病が、更紗だけにサラッ(ここは笑うところです!)と書かれています。全体的に人間のホッコリした感じが、文面からも伝わってくるのですが、一方で、社会保障や病院制度の混沌でドロッとした世界も解説されています。何がいいとか悪いとかではなく、ありのままがそこにはあって、不条理と思われても享受せざる負えない現実があり、それに立ち向かう作者がドンキホーテのようにも写ります。

素直にいうと、すんなり読めていい本なのでしょうが、少し読み物としては物足りなさも感じました。でも、更紗さん、あなたの第一歩は、相当勇気のいることで、私にはできないでしょう。ムーミン谷のご両親、あなた方の娘さんは、素晴らしいです。生きるって大変なことですよね。