2:4:2:3 の法則と契約形態の変化

数字にまつわる過去例から生み出された法則(知っておくといい言葉)には、『なるほどな!』とうならせるものがいくつもある。2:4:2:3はそのひとつで、企業の情報化投資をベンダー側からみた数字推移を表したものである。意味は簡単で、「契約したときの規模・金額を2とすると、要求分析の段階で倍の4の規模になってしまうのが常である。するとベンダーは追加費用を要求するもののユーザーは当初の2しか払わないという。交渉の積み重ねの結果、中をとって3の費用で4の規模のシステムを開発することになった。ユーザーは費用が2→3になったことに不満を持ち、ベンダは3の費用で4の規模をやらされたことに同じく不満を持ったり、次の開発で差分を載せたりする。」といった内容だ。どうだろう、システム開発のベンダー諸氏だけではなく、建築など完成や納品請負で契約する業態には心当たりのよくある事象ではないだろうか?この言葉には、ユーザーもベンダーも耳の痛い反省すべき内容が盛り込まれていないだろうか?
この経験則2:4:2:3がITの世界で変化の渦中にある。旧来の『工事完成基準』での要件→設計→開発→テストを一括で契約する形式が、来春2009年4月から会計監査を受けているベンダー(小規模以上のところはほぼ全てだろう)に『工事進行基準』が適用されるからだ。いわゆるゼネコンの全体請負契約から、作業局面毎の分割契約が要求されるのだ。こうなると益々ユーザー側は、システム開発の知識と経験を身につけていないとならなくなり、いままで以上に仕事を出す側のユーザーも、請ける側のベンダーも、費用と時間のコントロールが重要になる。統計的な数字は後から追いかけてくるものだろうが、恐らく過去の経験から、ベンダー側のあるべき姿の2:4:2:4(作業する規模の開発額となるのは当然・・・はじめに金額は約束していないので・・・)となるだろう。なぜなら、局面化で契約することで、作業内容が明確化することは契約という意味ではあるべき姿(欧米は旧来から)だが、明確化することで、当然ながらユーザーは後に引けなくなり、いままで、立場を利用したいわゆる"押し込み"はできなくなる。また、ユーザーだから、多少Pending事項の回答が遅くなっても見逃してもらっていたが、契約期間が局面化で短くなるので、より即答対応できる体制が要求される。よって今後は、いままで以上に厳格なシステムと運用の組み立てが大事になり、さらに要件定義の中身の濃さと、ユーザーコントロールがプロジェクト成否を決めることになる。したがって、社内のシステム部門は旧来のベンダー任せスタイルからの脱却を迫られ、本来あったユーザーをリードする責任が顕在化する。益々PMOやプロマネは手腕の見せどころだろう。
これらの変革は、ある意味ビジネスチャンスでもある。IT業界全体から見て、会計基準改革は、取引のスタイルだけでなく、そこからくる商習慣をも変えてよくなった事例にしたいものである。